美しい絵本は、子供たちに戦争や悲しい歴史を伝えます。
| 2013年08月10日 11:29 | 吉村正臣 |
LE PETIT GARÇON ÉTOILE (小さな星の少年)
イラストレーター:Olivier Latyk
出版社:casterman
フランス語
内容は、ナチドイツから逃げるユダヤ人の少年の短編の物語です。美しい色彩が、よけい悲しい少年の心境を表現しています。心の中が明るいときは、明るい色彩に満ちていますが、ナチスの迫害を語るシーンは、場面が反転して暗く重々しく表現され、空まで真っ赤になります。最後は明るい画面で救いとなりますが、しかし、全ページを通じ、少年の表情が寂しそうです。
KOKI SOLDATO SBADATO(おっちょこちょいの兵隊コキ)
イラストレーター:Marcella Moia
出版社: orecchio acerbo
イタリア語
ウサギをキャラクターにした絵本です。このシリーズは数冊出版されています。ただし、内容は、戦争の話です。ウサギを起用することで、あまりの悲惨さを、和らげ子供にも取っ付きやすいようにしています。また爆弾や戦車なども図式化されています。戦争のお話でなければ、もっとかわいいウサギが描けたのかも知れません。
<LIBERTÉ>(自由)
イラストレーター: Anouck Boisrobert
詩:Paul Éluard
出版社: Flammarion
フランス語
詩:ポール・エリュアール(1895年12月14日〜52年11月18日)は、フランスの詩人。レジスタンスの闘士、そして『愛』を多く歌った。
■詩<LIBERTÉ>(自由)の背景
1937年、スペイン内戦中のゲルニカ爆撃に、エリュアールは『ゲルニカの勝利』を書き、友人パブロ・ピカソは『ゲルニカ』を描いた。
1942年、ドイツ軍が占領するパリを逃れ、南東部の街に。反ナチの詩を匿名で書いた。イギリスの空軍機はそれを、フランスの空に撒いた。それに曲がついて繰り返し歌われる。作曲はフランシス・プーランクと、のちに知れた。同年の7月16、17日には、パリとその郊外に住むユダヤ人13,152人が逮捕され、アウシュビッツに送られた、という背景もありました。
こういったことが、この絵本「<LIBERTÉ>(自由)」が、フランスで推薦本に選ばれる一因と思われます。
美術工芸なみの加工のすばらしさを施すほど、この詩はフランス人にとり大事なものとわかります。
本の様子:http://www.youtube.com/watch?v=O3gY8awsirY