ヨーロッパの一流イラストレータ イタリア、フランス、ベルギー、ドイツで活躍中のアーティストを紹介
   
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金のりんご賞やボローニャ・ラガッツィ賞など、多数の受賞作家

| 2016年07月14日 09:00 | 吉村正臣 |

Chiara Carrer キアラ・カッレル (イタリア)

Regarde, je ne pleure plus
見て。もう泣いてなんかいない

regarde表紙750

フランス語 翻訳付
出版社: Editions Notari

キアラ・カッレルは、イタリアを代表するイラストレーターのひとり。イタリア、スペイン、スイス、オーストリア、ドイツなどで100冊をこえる絵本を出版。「ブラチスラバ世界絵本原画展」金のりんご賞やボローニャ・ラガッツィ賞など、多数の受賞歴があります。

つらい別れのあと、主人公は街をさまよいます。そして都会の片隅の、思いもかけない場所で、力強く生きる草花を発見します。この絵本には、つらいできごとを乗り越えるための2つのヒントがあります。じっとしていないで外に出て歩くこと、遠くへ行くこと。もうひとつは、自然の力を借りること。主人公は、街の「雑草」と出会い、自分のつらさ以外に目をむけることができるようになりました。物語の最後には、新たな出会いを予感させ、希望に満ちたエンディングとなっています。巻頭と巻末に登場する草花は、私たちの近くにもあるかもしれません。

鉛筆かコンテか、線で、建物や木々のある風景が上手な人です。建物は、パースが正しくとらえられ、遠近がしっかり描かれています。また、ジュネーブを思わせる大きな街路樹や公園の大きな木も太い線でざっくり描きながらも、たいへんリアルです。それらを背景に、一人の男の子を実在的に、さまざまな人を単純化して、背景にコラージュします。男の子の心理とともに表現が変わり、さまざまな工夫をしています。草花のデッサンも興味深いです。

≪翻訳の一部≫   翻訳:泉 りき

ぼくらは、別れなければならなかった。
ふたりがやり直すために、できることは何もなかった。
ぼくは叫んだ「いやだ!」と。
これでもか、というほど泣いた。
だけどそんなことをしたって
もとどおりになるために、できることは何もなかった。

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