カエルたちは擬人化され、人間と同じように表現
| 2019年07月01日 23:09 | 吉村正臣 |
Marco Somà マルコ・ソマ (イタリア)
La reine des grenouilles
カエルの王女の王冠さがし
フランス語 翻訳付
出版社: RUE DU MONDE
マルコ・ソマ(1983年生まれ)は、イタリア北部クネオ出身のイラストレーター。地元クネオの美術アカデミーとマルケ州マチェラータのArs in Fabulaイラストレーション学院のマスターコースで学びます。卒業後はイラストレーターとして活動を開始。母校の講師もつとめています。2011年ボローニャ国際絵本原画展に初入選。その後2013年、2014年、2016年にも入選します。2013年ブラチスラバ世界絵本原画展に入選。2017年ニューヨークのソサエティ・オブ・イラストレーターズで作品展を開催します。2015年には、今回ご紹介の絵本のイタリア語版が、エマヌエーレ・ルッツァーティ賞を受賞します。2017年アラブ首長国連邦シャールジャ国際絵本展では、絵本<Il richiamo della palude>が第2位となり、イタリアのみならず、米国やフランスにもエージェントがおり、世界的にも注目されています
久しぶりに笑えるお話です。池で仲よくのんびり暮らすカエルたち。池に王冠が落ちてきたことから、暮らしは一変します。王冠を真っ先に見つけたメスのカエルが「王女」となります。フツーのカエルが、王冠を手に入れてからどんどん傲慢に。食べるものもどんどんぜいたくになり、ほかのカエルをこきつかいます。ある日、王女を喜ばせようと、取り巻き連中が飛び込み会を計画します。一匹のカエルが、王女にも飛び込みを見せてほしいと頼みます。高い飛び込み台から池の水へ落下する王女。そのせいで大事な王冠をなくします。王冠がないなら王女じゃない!と反旗をひるがえすカエルたち。みんなで元王女めがけて泥だんごを投げつけるシーンをはじめ、ユーモラスなカエルの表情やしぐさに目を引きつけられます。
非常に繊細で、ち密に鉛筆の線描きで仕上げ、それに水彩絵の具で色を付けています。虫眼鏡で細部を見ると、同じ筆圧で、等間隔にきちんと方向を合わせ鉛筆線が走ります。根気よくていねいに描いたのでしょう。
主役のカエルたちは擬人化され、洋服、動作が、まったく人間と同じように表現されています。
一方、その背景となる草や葉が、大変リアルに描かれています。忠実な描写です。そして、その草や葉が占める割合が、カエルたちと同じぐらい。絵によっては、カエルが取り囲まれてしまっています。
この草や葉のリアルさが、擬人化されているカエルの動作さえ現実的に感じさせることに成功させているのでしょう。
さらに、草や葉の色合いとカエルたちの顔の色合いがよく似ています。洋服の色が少し違うのですが、色が統一されていることから、自然物とカエルが一体となった絵に仕上がっていると思います。よく考えられた絵です。
カエルたちの目を見てください。目玉の立体感がよく出ていますね。その他、体のわずかな立体感など、コンピュータを使い表現しています。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
その場所には昔、池がありました。池にはカエルがいました。
飛び跳ねたり、ハエをつかまえたり、居眠りしたり、ときにはトンボと遊んで過ごしていました。
夏になると、夕食後はみんなで歌って楽しみました。
気持ちのよい、夏の夕べのことでした。何度もゲロゲロ、ケロケロ、ゲロゲロの合唱が出てくる歌を歌っていると、突然、何かが空から落ちてきて、バッシャーン。池に沈みました。
カエルたちはあわてて飛び込みました。ホタルの助けを借り、照らしながら池の底をくまなく探します。
そのおかげで、探しものが落ちている場所がわかりました。
一匹のカエルが、すばやく見つけました。丸くてきらきら光る小さなもの。それは王冠だったのです。
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