リンゴの木と訪問する小鳥の、1年にわたる美しいお話です。
| 2021年06月03日 00:00 | 吉村正臣 |
Anne Crausaz アンヌ・クロザス(スイス)
L’oiseau sur la branche
野鳥たちの四季
フランス語 翻訳付
出版社:Editions MeMo
スイス出身のイラストレーター。ヴォー州立ローザンヌ美術学校で、グラフィックデザインを学び、その後イラストレーションの世界に入ります。1999年スイス連邦文化省のイラストレーター奨学金を獲得し、ポーランドの古都クラクフで創作活動を行います。現地の美術学校で、空間と線の描写を学びました。2007年初めての作品をフランスの出版社Editions MeMoに送り、 絵本Raymond rêve 出版されるとたちまち人気となり、フランスの絵本賞ソルシエール賞を受賞。第2作目のJ’ai grandi iciは2009年« La Science se livre »賞を受賞。手書きとデザインソフト・イラストレーターのベジェ曲線を組み合わせ、植物や動物をあたたかい視点で描いています。
1年は52週あります。毎週1羽、新しい鳥が、1本のリンゴの木の枝にやって来ます。52種類の鳥たちの暮らしぶりについてのエピソードを紹介します。季節がうつりかわり、枝にやって来る鳥がいれば、旅立っていく鳥がいます。リンゴの木は成長し花が咲き、実をつけ、収穫を迎えます。
リンゴの木のほぼ同じ部分に目を据え、1年間、木の変化と、かわいい訪問者を、観察者の目で描いています。文章は小鳥の名前と生態、そして特徴をとてもシンプルに説明。遠くシベリアやアジア、アフリカまで渡る小さな鳥がいることに驚かされます。
絵は、早春から夏に、秋から雪の季節を迎える。葉の成長の様子、花の変化、精密に、克明に、美しく描かれます。緑の微妙な色使いが葉の季節の変化を見事に表します。これを背景に、小鳥の愛らしさが遺憾なく表現されます。様々な形があり、多彩な模様、目元・嘴がなんと愛らしく描かれていることでしょう。小鳥達はこれほど多くの色彩を持っていたのでしょうか。
生命の素晴らしさ、自然の偉大さが絵に現れています。科学者的視線でありながら、画家が生命の躍動を吹き込んだ、素晴らしい作品です。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
1月1日。1年のはじまり。冬の寒さがここ一週間、居座っている。秋の名残りのリンゴが、ひとつ残っている。青いシジュウガラがさかさまになって、からだを揺する。
雪が雨に変わった。若いコマドリはまだ枝にいる。寒さから身を守ろうと、羽根をふくらませる。コマドリはきれいな声を響かせようと、ここに一羽だけでいるのが好きなのだ。冬に備え、食糧の昆虫を見つけようと、枝の上から見張っている。
まだ寒いのに、春を待ちきれず、枝から新芽が顔を出している。白い綿毛で芽を寒さから守る。まだら模様のイワヒバリは、とても臆病。巣からすぐそばにあるリンゴにも、静まりかえった雪の中にそっと近づく。
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