マンガのジャンルだが、1点1点に力と不思議なイメージ
| 2012年12月22日 10:24 | 吉村正臣 |
Isabelle Pralong イザベル・プラロン (スイス)
PRÉDICTIONS
予言
フランス語
パリの絵本市会場のBande dessinée(マンガ)コーナーで見つけました。一瞬にしてユニークだと飛びつきました。
まず表紙は布地のようなのです(表面加工のある紙だと思いますが・・・)。これに直接銅版画で刷ったような描き方。布地のザラザラ感があるため、印刷インクがのっていないような何とも稚拙な印刷です。が、それが魅力なのです。線書きイラストの表面をこすると、インクが周りににじみます。
中ページは1ページ1作品で、タイトルらしい文字が入っていますが、韻を踏んでいるのか詩か、象徴的フレーズなのか、よく分かりません。人がテーマのようですが、ストーリーはまったく理解できません。(フランス人に聞いても分からない、とのことでした)
絵は、線書き。やはり布の上に描いたのかプリントしたのか。ところどころ、地の布に別の小さな布が赤い糸で抜いつけられていたり、多色刷りがあったり。また、紙や板に精密に書かれている絵もあります。
絵は現代的で、すごくいいのです。生理的な不思議さ、怖さ、醜さが漂っています。
素人臭さがふんぷんとしているのですが、しかし、これだけ一定の息づかいで緻密に描き切れるのは、十分な力のある作家なのです。デッサン力も表現力もあり、それを超え不器用な手法を見せつけている、ぞくぞくさせる個性、この絵本の良さでしょう。
常識を越えた画集・・・一言で言えばそんな、すごく魅力のある作品です。
作家は1967年生まれ、ミラノでデザインの勉強をしました。現在はジュネーブ在住。アングレーム国際漫画祭2008で受賞。