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体験[オフセットを超える、イラストの美しい印刷を求めて]

| 2022年04月10日 05:48 | 吉村正臣 |

イタリアのイラストレーター「マリア・バッタリア」さんの作品を使用し、長年ポスターやパンフレットを制作してきました。美しさを追求するため、オフセット印刷分野で、化粧品関係を印刷するチームで刷ってきました。
が、イラスト部分は問題なかったのですが、薄い色が広がる部分に、ほとんど認識できない赤い点を発見。ルーペで見るときれいな網点の中に、“汚れ”がありました。

汚れのない印刷方法がないか、調べて、試し刷りをしてみました。この経緯を見ていただき、より美しい印刷・作品集作りに役立ててください。

 “汚れ”の原因は、赤点の形状がすべて同形状であることから、異物の粒子がCTP版(ダイレクト刷版)に存在していると判断。版下データをCTP版に焼付けた後、現像で洗う際に現像液、もしくは水に含まれている粒子が付着したと思われ、直接原因と結論づけられました。

改善としては、「版面」と「ブランケット胴」のこまめな洗浄、現像液交換のペースを早める。また、目視の強化、デジタル検知の強化。しかしオフセット印刷の構造の問題でもあり、100%の改善は難しい。0.4㎜以下なら許容せざるをえない、となりました。

旧友で印刷会社の社長K氏に、“汚れ”を見せて相談。「印刷物は非常にきれいに印刷されている。この“汚れ”はオフセット印刷である限り出る」とのことでした。「弊社はインクジェットデジタルプレス機を導入している。オフセット印刷では再現できない美しさが可能。写真アルバムや写真家の作品集に使う。写真プリントと見間違うほどのきれいな仕上がりである」と紹介され、機器周辺の資料をいただきました。

『インクジェットデジタルプレスJet Press 750S』(富士フイルム製)です。

インクジェットデジタル印刷機「Jet Press 750S」の解説

『世界初の解像度 1200dpi の高密度・高精度シングルパス方式プリントヘッドと、オフセット印刷のプロセス4色インキよりも広い色域を持つ水性顔料インクジェットインクにより、高速かつ高画質印刷に対応。

写真やイラストはもちろんのこと、文字再現性にも優れ、高品位な仕上がりを実現。専用紙を必要とせず、これまで使用している多様な印刷用紙に対応』。

詳しくは:https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/graphic/digitalinkjet/jetpress750s

3月15日、K社長の協力を得てインクジェットデジタル印刷機「Jet Press 750S」による試作を実施。先にオフセット印刷で使った「イラストレータによる出稿データ」を使用。

刷り上がりを見て、 “クリア!”と声が。文字の下に引いた薄い地模様もぼやけずにシャキッと見えます。ルーペで網点を確認。持参したオフセット分はきれいにC・M・Y・Kのドットが並んでいますが、インクジェットの方は網点が見えません。高倍率のルーペで見ると私には、オフセット網点の1/10ぐらいに思えました。確かにきれい !

「Jet Press 750S」は、鮮明さ、美しさとともに、汚れのないことも利点。入稿された印刷データはPDFで、これを転送するだけで出力が完了、刷版を使わずダイレクトに印刷。さらに品質検査機能が高性能で、極微細な埃も検知、用紙の問題も見つけると言います。仕上がりの美しさでは、オフセットより圧倒的に満足できます。

大量印刷には費用が高く不向きですが、小ロットなら適していると思います。特に美しさを求める絵画やイラストの画集、販売用カードにはおすすめです。

持参した印刷データはカラーモードCMYK、さらに写真、イラストもオフセット用に補正したデータでした。「Jet Press 750S」はRGBで出稿しなければなりません。また、「Jet Press 750S」の特性を生かすような補正をすれば、より美しい仕上げになると思いました。そのためには、作家自身、もしくはアートデレクターが特性を知ると共に、「Jet Press 750S」のオペレーションをする技術者の方たちとの十分な打ち合わせが必要でしょう。
K社長は「言葉が大事」とおっしゃいます。美しさへのプロセスを語り合えることが何より必要と思います。

 

・試作協力いただいた会社:(株)遠藤写真工芸所様
(ここへの直接の問い合わせは、ご迷惑をかけますのでご遠慮ください)

■お問い合わせは: illust-euro@cosmopolis.co.jp

 

≪試作に用いたイラスト≫

「Maria Battaglia(マリア・バッタリア)さん」(イタリア)のオペラ・シリーズ

<プロフィール>

小学校教諭を経て、イラストレーションを本格的に学ぶため、ミラノのヨーロッパ・デザイン学院に入学。子供のための絵本を中心に活動。ブラティスラバ国際絵本原画展やボローニャの常連でした。「魔笛」はアンデルセン2000年最優秀イラストレーション受賞。
イラスト・ユーロのコーディネートで小澤征爾氏のオペラ公演のメインビジュアルに作品を提供。スローフード発祥の地、ブラに住んでいます。