スタッピング画法が、あたたかい画面と絵の個性
| 2015年01月01日 00:01 | 吉村正臣 |
JULIA WAUTERS ジュリア・ヴォテル (フランス)
FANFARE
旅するブラスバンド
フランス語 翻訳付
ジュリア・ヴォテルは、1982年生まれの新進アーティストでシルクスクリーンや漫画も手がけています。ノルマンディ地方に生まれ、エコール・デュプレでテキスタイルを学んだのち、ストラスブールの装飾美術学校を卒業しました。
絵に特徴があります。下絵は水彩で描かれているようですが、随所にスタッピングで描いたようなところがみられます。スタッピングとは、型紙を切り抜き、そこに絵の具をつけてスタンプのように、画用紙などに押し当てて、型紙の形、押し当てられて付いた模様を作品とする技法です。この絵には、さまざまな形の型紙が作られ、これに絵の具をつけて押し当て、ムラのあるぼかしたような模様で、多くを描いています。このぼかされた模様が、あたたかな風合いを作っています。また、他に見られない、特殊な画風となっています。
工夫のある描き方が、絵の深さを作るとともに、作家の絵への熱意を感じ心を温かくします。
物語は、静かな村に、賑やかな渡り鳥のブラスバンドが到着。一日中大騒ぎする一行に、村人の目は冷たい。村から出て行くように言う者も現れる。だが、陽気なブラスバンドに誘われて、家に引きこもっていた村人は、楽しむことを知り、村はにわかに活気づく。
価値観が異なる人々を受け入れ、いっしょに生きること、楽しむことを伝える本です。渡り鳥のブラスバンドは、各地を移動しながら生きるロマの人々を思わせます。・・・<翻訳は:泉りき>
なお、世界の人権問題に取り組むNGOアムネスティ・インターナショナルの協賛で出版されました。
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