ミツバチをテーマに、世界各国の古いお話16編、絵はファニー・デュカセ。
| 2024年08月23日 05:00 | 吉村正臣 |
Fanny Ducasséファニー・デュカセ(フランス)
SECRETS D’ABEILLES
ミツバチの秘密
フランス語:翻訳付
出版社:Albin Michel
ファニー・デュカセは、1986 年生まれ。現代文学を、その後、ファッションの名門校・パリ・クチュール組合学校で学んだのち、イラストレーションの世界に入った異色の経歴の持ち主です。
特徴である、緻密に細部まで描き込んだ作風が素晴らしい。といって、部分にとらわれていることなく、バランスよく構成されています。細いペンで描き、そこに透明水彩か、で着色。その際、重ね塗りをし、微妙な色の変化を作っています。ペン描きの単純さを、色彩の重ね方でうまくカバーし、重厚さを出しています。
この本は、ミツバチを主人公にした、ペルシャや北米、トルコ、エチオピア、セネガル、日本などの古いお話が16編掲載されています。
エチオピアのお話では、王様と王女様とミツバチ、日本のお話では、若いお侍と村人とミツバチなど、土地柄や、風習などが想像でき楽しい内容です。
ミツバチと人類の関わりは古く、1万年前には既に採蜜が始まっていたとされます。そのため、世界の各地で、ミツバチと人との物語が生まれているのです。
本書の最後にあるミツバチの科学に関する章のおかげで、疑問に対する答えを見つけることができます。ハチや蜂蜜を思いながら、読んでください、一層楽しいでしょう。
イラストは私たちをカラフルな夢のような世界に連れて行ってくれます。にもかかわらず、計り知れない宝物であるこの絶滅危惧種への非常に美しいオマージュとも言えるでしょう。
文章は、ピエール=オリヴィエ・バンワースが書きました。彼は物語の語り家として知られ、パリの名門演劇学校演劇学校出身。自分自身を遊牧民とし、各地の民族的な物語を、感動的に聞かせています。このミツバチのお話も、彼の創作力によって、魅力を増したのでしょう。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉りき
<おはなし>
本物のバラ (エチオピアのお話) 運命に立ち向かう男 (ペルシャのお話)
人それぞれに (セネガルのお話) ジェイダ (ペルシャのお話)
花のない国 (オセアニアのお話) 一滴のハチミツ (アルメニアのお話)
・・・
夢を運ぶ人 (日本のお話)
「牡丹蘂ふかく分出づる蜂の名残哉」 芭蕉
(牡丹の花の奥で美味しい蜜をいただき、名残り惜しく飛び立つハチと私は同じです。さようなら。松尾芭蕉「野ざらし紀行」)
結婚以来、シンとユキは屋久島の森のはずれにある粗末な小屋に住んでいました。屋根に降る雨を飲み水にするほど夫婦は貧乏でした。食べ物といえば、茹でたわずかな植物の根が米の代わりです。それでも不満はありませんでした。愛さえあれば、どんなことも乗り越えられそうでした。
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