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デビュー作「森のルーヴ」で一躍人気作家、新作も『森』でした

| 2021年08月14日 09:00 | 吉村正臣 |

Fanny Ducassé ファニー・デュカセ(フランス)

LE JARDIN DES OURS
パピィとぺぺがいた庭

des ours表紙

フランス語 翻訳付
出版社:Editions Thierry Magnier

ファニー・デュカセの最新作(2015年10月発売)です。まだ20代の若手で、大学で現代文学を、ファッションの名門校・パリ・クチュール組合学校で学んだのち、イラストレーションの世界に入った異色の経歴の持ち主です。

物語の舞台は、前回と同じく「森」です。主人公のクマ「ぼく」が、パピィとぺぺと過ごした日々を回想します。フランス語でパピィ(Papi)とぺぺ(Pépé)は「おじいちゃん」(幼児語)を意味します。森の庭で、二頭のおじいちゃんといっしょにしたこと、教えてもらったこと。すべてが「ぼく」の大切な思い出となり、あざやかによみがえります。今回の絵本では、料理が得意なパピィのレシピが登場。ぺぺが歌う「リラの花が咲くころ」は、1890年に作られ、今も歌いつがれる曲です。さらに世界中で放映される連続ドラマ『ザ・ボールド・アンド・ザ・ビューティフル』を見るシーンも描かれ、暖かさの中に、ユーモアと情報がいっぱいつまった絵本です。

とても細かく、ていねいに明細に描かれています。この作家の特徴が、ふんだんに現れています。これだけ描き込まないと、力のある絵ができないのだと、感心します。左ページに木々、木の葉でページを満載、右ページを白地に文字だけでレイアウト、キレイな編集となっています。さらに次に開くと、白地を生かした絵が登場、さわやかな絵も見られます。熊の動作が愛らしい。細いペン書きと透明水彩ですが、重量感のある仕上がりです。絵の具のぼかせ方も上手です。

≪翻訳の一部≫  翻訳:泉 りき

四月になり、黄色いスイセンが咲くころ、昔ならパピィとぺぺがいっしょだった。
緑色の草の上に、バラ色とブルーのクマが色を添える。あのころは、そうだった。
2頭の姿は、ぼくの心にしっかりと焼き付いている。
草の上で踊ったり、互いがぶつかったりする姿が、目に浮かぶ。
そんなことを考えて、ときどきぼくは、今どこにいるのか、わからなくなることがある。

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