ブルーと深い赤で恐怖を強調されたペローの「青ひげ」
| 2021年12月25日 05:00 | 吉村正臣 |
Frédéric Bélonie フレデリック・ベロニー(フランス)
La Barbe Bleue
青いひげの男
フランス語 翻訳付
出版社:ACTES SUD junior
フレデリック・ベロニー(1975年生まれ)は、パリ15区にある国立高等工芸美術学校出身。卒業後は、広告制作の世界で、グラフィック・デザイナー、アート・ディレクターとして活躍する一方、イラスト作品を制作していました。2014年絵本デビューを果たします。2015年発売のこの絵本は、第二作目となります。
シャルル・ペロー(1628〜1703)フランスの詩人。『ペロー童話集』の作者として有名。ペローの物語は、今も世界中の子どもたちに愛され、音楽や映画、舞台、オペラなどのテーマとなっています。『眠れる森の美女』『長靴をはいた猫』は有名です。
シャルル・ペローの「青ひげ」をご存じですか?1697年(日本では江戸時代の前期)に書かれたお話ですが、物語は古さを感じさせません。結末はいったいどうなるのか?と、読み進むうちに興味がどんどんわいてきます。
《ある金持ちの男は、青い髭を生やしたその風貌から「青ひげ」と呼ばれ、恐れられていた。また、青ひげは、これまで6回結婚しながら、その妻たちは、ことごとく行方不明になっていた。青ひげは、4兄妹のうちの美人の姉妹に求婚し、妹と、7回目の結婚をすることになった。さて、この新しい妻は…》
ていねいに描いた絵です。柔らかい芯の鉛筆だと思いますが、線のストロークがそろっていて美しい、シンプルで無駄がない。人ばかりか、家具や木々、建物もしかり描かれています。モノクロで描いた上に、色を伏せています。製版上か、PCで鉛筆画に入れたのか、色は筆で塗っていません。きれいな色面を実現。色構成で、例えば『青ひげ』がテーマだけに、ブルー調で、さらに深い色と、赤で、恐怖が強調されています。とてもドラマティックな絵です。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
むかしむかし、ひとりの男がいました。町といなかに、美しい屋敷をかまえ、金と銀でできた食器、豪華な模様の家具や、金色に光る馬車まで持っていました。
そんな男でしたが、不運にもみにくくおそろしい青いひげをはやしていたのです。彼の姿を見て、逃げ出さない女性は、いませんでした。
彼の家の近所に、上品な婦人が住んでいました。とてもかわいい娘がふたりいました。ひげの男は「娘さんのどちらかと結婚したい。どちらにするかは、奥さまに任せする」と申し入れました。ですが婦人は、その話を聞き入れませんでした。
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