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2014年モントルイユ絵本市のメインビジュアルを描いた

| 2020年10月23日 05:01 | 吉村正臣 |

Audrey Calleja  オドレイ・カレジャ(フランス)

Sin le veilleur
サン-夜の訪問者

sin表紙-650

フランス語 翻訳付
出版社:Seuil Jeunesse

フランスの若手イラストレーター 、サンテチエンヌ美術学校を卒業。絵本出版、雑誌への作品提供のほか、2014年モントルイユ絵本市のメインビジュアルを描いたことでも有名です。繊細な線で描いたデッサンに、花模様・幾何学模様やコラージュを組み合わせるなど、多彩なテクニックで表現。詩的で自由な空気を漂わせています。

主人公のサンは、使い古したノートの上のインクのしみ。ほこりっぽい物置小屋で過ごしていましたが、ある日、ノートから脱出。夜な夜な外出し、子供部屋を見つけては侵入。子供を驚かせて楽しんでいました。が、それにも飽きてきます。ある夜、アリスという子の部屋を訪ねます。アリスは眠らず起きていました。サンを見ても驚きもせず、無関心。アリスのことが気になるサン。眠れるようにしてあげたい。だけどサンはインクのしみ。語りかけることばがありません。真夜中に繰り広げられるサンとアリスの交流、誰かに語りかけることの大切さを感じてください。

ペンや鉛筆、クレヨンがとても繊細に使われています。紙の白地に直接描いた部分、他の紙に描き、これを紙に貼った部分があまり違和感なく、平面的な絵として完成されています。シンプルな線描きの、しかし表情豊かに描いた女性の顔、その衣服が黒、この単純なコントラストがキレイです。赤の面が、次第に広がっていき、最後はあたたかな赤がおおう色の変化、また、小さな点を上手に使っているのも、優しい効果を上げるのに役立っています。

≪翻訳の一部≫   翻訳:和泉りき

サンは、月のない夜とパンのない朝にお目見えする。
サンは、紙の上に生まれてきた。物置きに放ったままの、ノートにできたインクのしみだった。
カビやほこりのにおいがする、マス目の入ったページにはさまれ、サンは息ができない。
そこでサンは、ぐーんとからだをそらせた。片側のページを押しつづけ、少しずつ紙の上から離れようとした。
なかなかむずかしい。引き戻されそう。それでもサンは、力をこめる。
ようやく足にひっかかっていた紙がはずれた。バリッ!ようやく脱出できた!

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