建築家の鋭い視線が、端正な絵を描く画法を完成させた。
| 2014年08月03日 00:20 | 吉村正臣 |
Victoria Fomina ヴィクトリア・フォミナ (ロシア)
MOZART World – Famous Composer
モーツァルト 世界の偉大な作曲家
英語
ヴィクトリア・フォミナは、ウクライナ生まれのイラストレーター。モスクワ建築工科大学で学んだのち、絵本のためのイラスト制作を開始します。これまでに30冊近い絵本を世界各地で出版。1999年ベオグラード金のペン賞、2003年ブラティスラヴァ世界絵本原画展・金のりんご賞などを受賞しています。
建築を学んだ作家だけに、モノの形や立体感、質感の表現が非常に優れています。たとえば、山の谷間にかかる石橋の絵、近景に山肌、中景の石橋、遠景に向こうの山、それぞれの距離が明確に構成されています。また、子供が大人に囲まれている絵も、子供から見た大人の大きさのデフォルメが、低い視線から描くことで強調されています。
この絵は、一見細部まで忠実な写実画に見え、ヨーロッパの古典画法を思い起こされます。そのとおりなのですが、不思議な仕掛けが隠されているところが、古典に終わらせていないのです。たいへん精密ですが、あまり神経質に見えないのは、建築的な構造で表現されているからでしょう。
絶版です