自ら描く人たち、絵が好きな人たちのためのすばらしい一冊
| 2021年03月07日 05:00 | 吉村正臣 |
Alessandro Sanna アレッサンドロ・サンナ (イタリア)
Le bois
森へ
文字のない絵本
出版社:Edizioni Nuages
ヴェローナに近いノラガという街で生まれ、ボローニャの美術アカデミーでグラフィックと広告デザインを学びます。装丁・挿絵作家としてスタートし、その後絵本の創作活動に。2006年イタリア・アンデルセン賞・最優秀作品賞を、2009年には同賞・最優秀イラストレーター賞を受賞します。2014年ロ・ストラニエーロ賞を受賞。2016年国際アンデルセン賞のファイナリストになりました。日本ではボローニャ絵本原画展(2007年)で、彼の作品が展示されました。
部族の踊りが、森の中で繰り広げられます。部族にとって森は母なる地。同時に部族の偉業を、美しい肢体で舞い、森は表現する舞台なのです。作者のアレッサンドロ・サンナは墨だけで、森と人間が紡ぎ出すシンフォニーを描きました。音楽が聞こえてきます。ダンスが始まります。「自ら描く人たち、絵が好きな人たちのためのすばらしい一冊」とフランスで紹介されています。
実に繊細でありながら、生き生きとした描写です。日本か中国の墨を使っていると思います。よく性質を知っていて、濃淡を上手に使っています。細い筆の線が、きれいですね。とくに、森の木々がまっすぐに伸びている様は、私たちを森に誘ってくれます。森に住む人々も美しく描かれています。古代ギリシャの壺に描かれた男女のシルエットを彷彿とさせます。男も女も、ダンスをしているように美しい。墨で描いた上を、さらにひっかき傷を入れ、紙の白を線状に表し、さらに繊細さを増す細かな心配りも見事。デッサンの勉強になる作品です。
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