ヨーロッパの一流イラストレータ イタリア、フランス、ベルギー、ドイツで活躍中のアーティストを紹介
   
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ローマの史跡が各所登場。旅行された方には楽しいでしょう。

| 2018年10月15日 09:42 | 吉村正臣 |

Tiziana Romanin ティツィアーナ・ロマナン  (イタリア)

La louve et L’Anglai  
オオカミのローマ案内

フランス語 翻訳付
出版社: Éditions SARBACANE

イタリアのヴェネチア近郊で生まれ、ミラノとパリを行き来しながら生活しています。ヴェネチアの美術アカデミーで舞台装飾を学び、舞台衣装の製作を経て、イラストレーションの世界に入ります。ポルトガルのイラストレーションビエンナーレIlustrArteに2003年と2004年に入選。さらに2005年にボローニャ絵本原画展に入選します。2015年と2016年は、イタリアの国際イラストレーション展Sarmedeに作品を出品。すでに数冊の絵本を出版。イタリア、フランスを中心に各地の学校でイラストレーションを学ぶ学生のマスターコースを担当しています。

実在した英国の医師、リチャード・ディーキンを主人公にした物語。ローマへの旅に出かけ、街に残る遺跡や名所にすっかり魅了されます。ボルゲーゼ公園で偶然に見かけたオオカミが、ディーキンの行くところに現れます。円形競技場(コロッセオ)の中に生育する植物に疑問を持ったディーキンは、その謎を解くために、ローマを散策。案内役を買って出たオオカミが、その謎を解く手がかりをくれます。ディーキンとオオカミの不思議な友情が、ローマの街を背景に楽しくやさしいタッチで描かれます。

建物の描き方が立体的で、太い木が空間性を際立たせています。建物と木々が美しく、古代から続くローマならではの絵となっています。この作家の、淡い色合いと、紙の白を生かした手法がここにも現れています。おそらく、濃い鉛筆、オイルパステルも使われているかな?・・・それらによる、しっかりした線描き。そこに、フェルトペン(マーカー)でしょう、淡い色を塗り重ね、深いトーンを作っています。特に、木々の幹を細い線の重なりで描き、葉は太さを変え、描き方を変えた緻密な表現法をもちいて、種類の違いや奥行き感を出しています。黒い線がきれいな作品です。

<翻訳の一部>   翻訳:泉 りき

1846年の春。英国出身の若き医師リチャード・ディーキンは、ロンドンからローマに旅立ちました。時間のかかる旅でした。馬を使い、船に乗り、そして歩いて。子どもの頃から夢に見た旅です。彼のおばあさんが、ローマ帝国のことをたくさん話してくれたからでしょう。

ローマに着くとすぐ、ホテルに荷物を置き、散歩に出かけました。英国人はよく、うしろを振り返ります。何となく気になるのです。「疲れているのか。いや、この太陽のせいだろうか」ひとりごとをつぶやきました。あとをつけられているような、そんな気持ちだったのです。

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