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絵の圧倒的な力で、わたし達を別世界に連れて行きます。

| 2021年06月20日 16:11 | 吉村正臣 |

Marion Janin マリオン・ジャニン(フランス)

L’Enfant errant
さまよう子ども

出版社: L’atelier du poisson soluble
フランス語 翻訳付

 

1972年、リヨン生まれ、現在フランス中央部オーヴェルニュに住み、イラストレーターとして活動しています。芸術家であった祖父のもと、幼いころから絵を描くことに親しんでいました。大学で数学を学び、教職を経験した後、イラストレーターをめざすことに。文化財団Fondation de Franceの奨学金を得て、フランスにあるふたつの美術学校(エピナル、ナント)で美術の勉強をします。

2003年、自身のアフリカ・ブリキナファソへの旅の経験を絵本にした”Noir Ebène”でデビュー。

繊細で丁寧なデッサンで、2011年ピュイ・ドゥ・ドーム県のすぐれた造形作家に贈られる賞を受賞します。絵本の出版のほか、音楽家の演奏シーンのデッサン作品も多数あります。

日本の劇画のような絵本かなと思いました。文字が少なく、絵がドラマチックなのです。

主人公の子どもがひとり、ひたすら歩き、古代都市の門にたどりつきます。街の市場で、空腹だった子どもはくだものを盗もうと。人々は子どもを追いかけます。やがて砂丘が広がる海に。子どもの存在は明らかにされず、現実と夢を行き来します。子どもが夢から覚めたとき、現実の世界も人間も、跡形もなく消え去ることを暗示しながら、物語が終わります。

精密なストローク、デッサン力の優秀さに驚かされるでしょう。濃いベージュの紙に、鉛筆コンテでみごとに描いています。この端正さは、CGも使われているのでしょうか。異様なドラマチックなモノトーンの世界から始まります。中世の建物の装飾が緻密で、よく研究しています。人体表現や洋服もみごと!沈黙の世界から、人があふれる都市に、そしてまた静寂に。大変化が楽しい。

<翻訳の一部>  翻訳 : 泉りき

夜の果て、めぐり来る朝、一歩一歩、ただひとり、子どもが地平線のかなたへと向かう。
冷たい大地に足を踏み入れ、歩きだす。
子どもは歩く。歩きつづける。ただひとり。
歩きすぎて、何かがおきても走れないほど。
どんなものだって、誰だって、止めることはできない。
音のない世界。荒れ果てた地に子どもがただひとり、頼る者などおらず歩く。
いったいどのくらい歩いただろう。1時間、2日、7年…誰もわからない。
ただ歩く。7年後の3日目に、小さな町の門にたどり着く。

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