内容も画法も、イタリアの伝統が忠実に表現され
| 2018年06月15日 05:00 | 吉村正臣 |
Arianna Papini アリアナ・パピニ(イタリア)
L’ange des chiens perdus
ホームレス・アンジュが教えてくれたこと
フランス語 翻訳付
絵・文:Arianna Papini(アリアナ・パピニ)
翻訳(伊語→仏語):Claude E. Dagali(クロード・E・ダガリ)
出版社:La compagnie Créative
イタリアのイラストレーターにとって、権威のある賞「イタリア・アンデルセン賞」、2018年はこの絵本の作家、アリアナ・パピーニが最優秀イラストレーターに選ばれました。2002年にも同賞を受賞しています。フィレンツェに生まれ、この街で美術と建築を学びます。卒業後、イタリアの有名出版社Fatatracで、編集長、アートディレクターを25年務めます。フィレンツェ大学建築学部のインダストリアルデザインコースと協力して、ゲームブックの研究プロジェクトを担当しました。Palms賞、イタリア環境賞など多くの賞を受賞し、2011年、2012年、2013年のIbby(国際アンデルセン賞)にノミネートされました。彼女の絵本はイタリアだけでなく、フランス、スペイン、台湾など各国で出版されています。
女の子・アルバは、おとなになりたくない。おとなになることがこわい。おとなは何でも勝手に決めて、あれこれ文句を言うからだ。今回の旅も、アルバの意見も聞かず、親が行き先を決めたから。旅で訪れたドナウ川でアルバが見たのは、川にかかる橋の下にいるホームレス。アンジュ(天使)と呼ばれ、大人にならず子どものまま、性別も不明。自分の上着の中に捨てられた動物たちを保護し、ともに生きている。アルバはその姿に、教会や美術館で見た慈悲の聖母を思う。あわてて大人になる必要はない。子どものままでも誰かを助けたり、思いやる心があればいいのだ、とアルバは気づき、不安を克服する-小さな出会いが、心のあり方を大きく変えることを教えてくれます。
色画用紙に、オイルパステル、その他水彩絵をつかって、なかなか重厚な絵となっています。色画用紙の下地が生かされたあたりは、イタリアのベテランたちが好んで選ぶ画法のひとつです。
また、人々、動物の形に特徴があります。身体がしっかり描かれ、顔は彫りが深く、まるで彫刻のような丸みを帯びます。この個性的な表現様式では、誰も忘れることはないでしょう。
美しい色彩が様々に使われます。それぞれ黒を背景のベース(色紙の色)に塗られるため、独特の深さを持っています。イタリアの伝統から生まれた作品でしょう。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
猫背のホームレス・通称アンジュは、橋の下でその日暮らしをしている。
幼いころの思い出は、荒れ果てた家の姿だけ。魚釣りやトラブルを解決するのにパワーがいるとき、アンジュは男になる。
はぐれた子犬を大きな手でなだめたり、ひなの巣立ちを助けるときは、女になる。
売り切れました。絶版のため取り寄せできません。あしからずご了承ください。
この絵本の概要は: http://illust-euro.ocnk.net/product/424