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’18年、日本巡回のボローニャ絵本原画展で特別展示

| 2018年12月23日 00:01 | 吉村正臣 |

Manuel Marsol マヌエル・マルソル(スペイン)

LA MONTAGNE 
ラ・モンターニュ        

フランス語 翻訳付
出版社:Les fourmis rouges

 

マドリッド出身。広告関係の仕事を経て、2012年デッサンと美術を学ぶために、バルセロナのデザイン・アート大学センター(EINA)に入学。卒業後はマドリッドに戻り、本格的にイラストレーションに仕事を開始します。2017年ボローニャ絵本原画展で、第8回ボローニャSM出版賞を受賞するなど、受賞歴も多数あります。2018年日本を巡回したボローニャ絵本原画展では、彼の作品の特別展示がありました。

ほとんど文字がない絵本です。イラストを中心に展開します。

主人公は、毎日のように同じルートを走る長距離トラックの運転手。運転中に急にもよおし、トラックを降ります。どこにでもあるような木の茂った森に入り、無事に用をたしますが、今度は道に迷い、どんどん山の中へ。途方に暮れる運転手を次々と不思議な生きものが現れ、導いていくようです。そして運転手はいつのまにかもとの道路にたどりつきます。トラックはドアを開けたまま、そこで待っていました。

山の中の時間は、人間とそれ以外の生きものと自然が重なり合い、その境界がわからないほど一体となっていきます。山に住む怪物が大きくなったり小さくなったり、山や自然は巨大な生きもののようになったりします。長距離トラックと運転手のリアルな表現と、山に入ってからの不思議な世界が溶け合います。なぜか受け入れてしまいたくなる、そんなお話です。

大木の幹、葉の塊が丁寧に描かれます。山の深さがよくわかります。山頂は岩肌がむき出て、そして雲がかかっています。奇妙な動物が出てきますが、いずれも人間のように描かれます。すべて不透明水彩絵の具で描かれているようです。板にたっぷり出した絵の具を筆で重厚に塗っていき、塗り重ねた絵の具が、山の深さを描き出しているように思えます。すんだ空のブルーが美しい、また、夕焼けで赤く染まる雲など、風景が生き生きしています。思い出が湧き出すような、なつかしさのある絵です。

≪翻訳の一部≫  翻訳:泉 りき 

来る日も来る日も、その運搬車は、山を越える。
でも今日は、山を越える前に、停止するはめになった。
ドライバーの、のっぴきならない事情で。(ピスパス 緊急運送24時間OK )

戻りたいんだけど、どっちだったか。ここじゃない。そっちでもない。帰り道がわからない。

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