『ロシア民話集』の中の「小指くらいの小さな男の子」から作られました
| 2019年01月25日 23:40 | 吉村正臣 |
Étienne Beck エチエンヌ・ベック(フランス)
P’tigars-p’tidoigt
こゆびたろう
原文:Alexandre Afanassiev
(アレクサンドル・アファナーシェフ)
フランス語 翻訳付
出版社:éditions MeMo
フランス北部アミアン出身(1981年生まれ)。ブリュッセルにある名門サン・リュック高等美術学校でイラストレーションを学びます。卒業後は、イラストレーターとして活動を開始。2007年この絵本P’tigars-p’tidoigtとLe petit Poussé(おやゆびこぞうのパロディ)を出版。こども向けの有名なお話を、新たな視点で描きました。その後、絵本作品と並行し、バンド・デシネの世界へと踏み込みます。お話や登場人物たちに潜む、暴力的な側面を描くことに興味があるそうです。
この絵本はロシアのグリム兄弟とも呼ばれる、民話研究者アレクサンドル・アファナーシェフが1855年から1863年にかけて編纂した『ロシア民話集』の中のお話「小指くらいの小さな男の子」=こゆびたろうです。小さくても知恵と勇気で生き抜くこゆびたろうの冒険物語は、現代の読者からすると野蛮で少し残酷かもしれません。物語の展開のおもしろさ、粗野ながら生きるエネルギーにあふれる登場人物たちの姿に、胸のすく一冊です。
有名なお話「親指トム」は、このこゆびたろうをもとに、小指を親指に変えて創作されたそうです。
オイルパステルで、ゴシゴシ描いた絵です。皆様も子ども時代にクレパスを使って描かれたことがおありでしょう。それと同じような画材で、同じような塗り方で、とても懐かしい作風です。描かれる事物、色合い、塗り込み方法など、まるで子どもの絵と変わりません。でも、やはり、しっかり絵の勉強をしたプロ作家です。物語を理解し、その場面の必要点を絞り込んで、単純化して表現しています。強調するところは画面いっぱいに、それぞれのキャラクターの特徴を強調して描いています。デフォルメも上手ですね。色彩が素晴らしい、赤、黒、緑、など、鮮やかです。ロシアの昔話で、今では凶暴なお話と思われますが、この絵が明るい絵本にしています。
<翻訳の一部> 翻訳:泉りき
その昔、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
ある日のこと、おばあさんがパイを作るのに、キャベツをきざんでいました。
ふとした拍子に、包丁で小指を切り落としてしまいました。
おばあさんは、切れた小指をつまむと、暖炉のすみに放り投げました。突然、暖炉の方から、誰かの声が聞こえました。
「かあちゃん、助けて!」
おばあさんはたいそう驚いて、ポカンと口を開けていました。
そして神様に十字を切ると「あんたは誰だい?」とたずねました。
「ぼくはあなたの子どもです。切れた小指から生まれたのです」
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