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これから旅がはじまる。そんな予感にみちた絵本です。

| 2019年03月29日 23:00 | 吉村正臣 |

Élisabeth Corblin エリザベート・コルブラン(フランス)

Attention au départ !
発車しまーす!

フランス語 翻訳付

出版社:Biscoto

 

軽妙なイラストと文章を創作するフランスの作家、エリザベート・コルブランのデビューアルバムです。スイスに近いオーベルニュ=ローヌ=アルプ地方で暮らしていること、ワインのラベルや雑誌など、さまざまなメディアへの作品提供をしていること以外、不明です。とても楽しく、今の時代のイラストらしい作品を描きます。

テキストはふたりの乗客のやりとりで、ひとりが列車にまつわるさまざまな質問を行い、もうひとりが答えます。その答えが実に珍妙で「なるほど」と思えます。列車で起こる何気ないことを、創作の起点にして物語を作り、さらにそれを超える、想像力で絵を描いています。ページをめくるごとに車両の中を移動し、そこで繰り広げられる、ちょっと風変わりな乗客たちのやりとりを実際に見ている気持ちになります。

連なる窓が全ページ通して描かれます。車体や座席は省略され、乗客達のポーズで想像させます。乗客は老人から子どもまでさまざま、服装も仕草もさまざま、生き生きとしたデッサンで、デフォルメされていますが、ユーモラスな表情で人柄が表れています。物語をよく捉えています。鉄のペンに黒い線で描き、洋服などにカラーインクやマーカー(コピック)などで鮮やかに描いています。色彩豊かに描かれますが、紙の白地が美しく、絵は抑制の効いた爽やかな色彩感となっています。突然、アップの絵があり、構成もよくできた絵本です。

<翻訳の一部>  翻訳:泉 りき

-乗車口のステップは、どうしてこんなに高いんだろうね。
-鉄道ができたのは大昔で、そのころ人間も、祖先のサルの名残りがあって、こーんなふうにぶら下がったりして、乗り込んだからね。きっとそうだよ。

-車掌さんは、どうして笛を吹くのかな。
-楽譜にそう書いてあるからよ。オーケストラみたいに。

-乗客は、どうして窓から外に向かって、ハンカチを振るのかな。
-出発前に、洗濯物を広げて干す時間がなかったからじゃないの。

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