いい訳で面白いお話です。物語を読みながら、絵をみてください
| 2019年05月25日 09:43 | 吉村正臣 |
Beatrice Alemagna ベアトリーチェ・アレマ-ニャ (イタリア)
Mon histoire courte de goutte d’eau
しずくの子
フランス語 翻訳付
出版社: Casterman
ベアトリーチェ・アレマ-ニャは、イタリア・ボローニャ生まれの絵本作家で、イラストレーター。現在はパリ在住です。1996年パリ郊外・モントルイユ絵本市で新人賞を、2006年ボローニャ絵本原画展で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。Un lion à Paris(パリにきたライオン)をはじめ、これまで制作した20冊以上の絵本は、フランス語を中心にさまざまな言語で出版されています。
2013年出版の人気絵本が、新たな文章と表紙で、再登場しました。浴室の蛇口からこぼれ出た水のしずくが、さまざまな試練を経て排水溝から地上へ。太陽にさらされ、いつか蒸発し、別のものになる。フランスでは、この物語を「旅」ととらえているようです。日本から見ると、万物すべては絶えず変化し、いつかは消えていく「諸行無常」を描いているように思えます。この世界が目には見えない「ほんのささいな」ものごとで、できているのだ、と気づかされます。
水滴が蛇口からぽろっと落ちるさまが、抽象画を見るように表現。水滴が旅する過程を描いています。いろんな形に変化します、大きさも色も様々に。人と関わる様、パイプを流れるシーンなども描かれます。
オイルパステル、水彩絵具、コラージュなど様々な手法が使われて、ベアトリーチェらしい画面ですが、写実から離れ、かなりイメージの世界の表現となっています。物語を読みながら、絵をみてください。面白いお話です。
<翻訳の一部> 翻訳:泉 りき
これからはじまるお話。主人公は水のしずく。
名まえは「グット」としておこう。
あっという間の、短いお話。
雨から生まれたんじゃない。
バラからとれたわけでもない。海から生まれたはずもない。
「グット」は街の子。都会生まれ。
浴室のパイプから流れてきて、蛇口からポトリ。
シャボン玉みたいに生まれてきた。
洗面台の上をすべると、からだはするりと長くなる。
「グット」のすぐ目の前で
猛烈ないきおいで、歯をみがく人がいる。
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