ベアトリーチェの作風が見事! 神経の行き届いた絵
| 2019年05月21日 23:00 | 吉村正臣 |
Beatrice Alemagna ベアトリーチェ・アレマーニャ (イタリア)
Les cinq malfoutus
だめだめ5人組の大逆転
フランス語 翻訳付
ベアトリーチェ・アレマーニャは、イタリア・ボローニャ生まれの作家、イラストレーター。現在はパリに住んでいます。1996年パリ郊外・モントルイユ絵本展で新人賞を、2006年ボローニャ絵本原画展で、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。イラスト・ユーロでもご紹介しているUn lion à Paris(パリにきたライオン)をはじめ、制作した絵本は20冊以上。フランス語、イタリア語を中心にさまざまな言語で出版されています。
主人公の5人組は、きれいとはいえない家に、いっしょに住んでいます。5人は、外見や中身に問題があり、これといったとりえもありません。唯一の楽しみは、おしゃべり。だめNo.1を決めるおしゃべりが大好き。そこへ5人組とは正反対の、自信満々強気の人物が登場。だめな5人組を何とかしようと来たようですが…。誰にも長所、短所があります。短所やコンプレックスだと思い込んでいることに、実はその人のすてきな面があるのだ、と教えてくれる絵本です。
いつもながら、楽しい絵です。画用紙に直接、鉛筆や水彩絵の具で描き、さらに別の紙に描いたものを切り抜きコラージュ。幅の広い制作法です。感心するのが、一見自由に無計画に描いているようですが、細かく見ていくと、隅々まで心配りができています。
まず、画面全体の、奥行き感=パース(パースペクティブ)が、きちんとできた上でデフォルメ。このパースにあわせて、人々の形、また、小物や家具が配置されます。人や動物の足の運びや指先まで、よく観察されたうえで描かれています。神経の行き届いた絵。この作家の特徴がよく出た作品でしょう。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
5人はいつもいっしょだった。
ひとりではからっきし。でも、5人集まると盛りあがる。
おなかの真ん中に、ぽっかり穴がある「ボッコ」。
手紙みたいに、ふたつに折れたたまれた「タタミゼ」。
いつもぐったりして眠ってる、脱力系の「ダレル」。
ぐるり180度。頭は地面に足が宙に「サカサルサ」。
さて最後。5人目のお名前は?
見ればみるほどよくない外見。
はちきれそうなくらい、まんまるでとんだ失敗作。
シクル」と呼ぼう。
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