繊細、そして大胆。鉛筆画の美しいかわいい寓話。
| 2023年05月03日 05:00 | 吉村正臣 |
Catarina Sobral カタリナ・ソバラル (ポルトガル)
La maison qui vole
空飛ぶ家
フランス語・翻訳付
出版社:LAJOIE DE LIRE
カタリナ・ソバラルは’85年、ポルトガルのコインブラ生まれ。アヴェイロ大学でグラフィックデザインを学んだ後、イラストレーションの修士号を取得。絵本やフリーランスのイラストレーターとして活動を始めました。’11年、ポルトガル全国イラスト賞特別賞を受賞。’14 年に名誉あるボローニャ国際絵本原画展で国際イラスト賞を受賞し、’17 年にはナショナル イラスト賞の特別賞を受賞しました。版画の制作も始めています。アニメーション短編映画も監督。いくつかの映画祭に選ばれました。現在リスボンに住んでいます。
ある朝、男が自分の家が飛んでいくのを見た。とても不思議に思い、今までそんなことはなかったのに…と、持ち主はとても困って、警察官に、役場にも助けを求めに行きました。いろんな役所に行きましたが、どこも何もしてもらえません。混乱してしまった男は、車で家を追いかけることにしました。
鉛筆の線が美しく、黒の階調が表情豊かに描かれています。一定方向に注意深く、しかし大胆に鉛筆を動かしています。作者の呼吸が聞こえてくるようです。そして、色鉛筆や印刷での着彩が画面に変化を付け、神経の行き届いた絵本にしています。すべてがかわいくて面白い寓話です。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉りき
ある日、家が姿を消した。実に簡単に地面から離れ、飛び去っていった。
まったくもって奇妙な出来事だった。こんなことは今までなかった。
家の持ち主は混乱していた。不測の事態が起こるとは、ついぞ思ってもいなかった。
家屋というものは、建てた場所にあるものと信じていたから。
キャラバンカーみたいに、車輪でもついていない限り。
家をなくした男は市役所に談判に出かけた。何とかしてほしいと。玄関を入ると、警官に出くわした。
「警察官殿、助けてください。家が消えてなくなりました」
「なくなっただと?家が盗ま
「だったら何だ?」
「わかりません。飛んでいったんです」
「そういうことなら、お役には立てない。災害サービスセンターへ相談に行けばどうか」
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