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’07年 フランス文化省の「小学校推薦図書」に取り上げられる

| 2015年08月18日 09:50 | 吉村正臣 |

Natali Fortier ナタリ・フォルティエ (フランス在住)

Quartiers d’Orange
オレンジをひとつ

quartiers表紙750

出版社: Editions Thierry Magnier フランス語 翻訳付

イラストレーターのナタリ・フォルティエは、カナダのケベック出身。サン・ジャック美術学校を経て、サンフランシスコ美術学院、パリ国立高等美術学校で学びました。イラストと文章を手がけたデビュー作<LILI PLUME>が、絵画部門でオクタゴヌ賞を、テキストが高校生ゴンクール賞をダブル受賞します。2003年には、ボローニャ・ラガッツィ賞に選出されます。現在はフランスに住み、出版社の書籍の装丁や絵本の出版、絵画や彫刻の制作もしています。

絵本の舞台は、スペイン・アンダルシア地方の小さな村。少女ペトラの目を通して、大好きなおじいさんの死が描かれます。2007年フランス文化省の「小学校推薦図書」にリストアップされました。ローマの遺跡、イスラム様式の建物、路地、地面の色、オレンジ色に染まる空など、印象的なシーンが描かれます。

とてもいい絵です。しっかりしたデッサン力、その省略する手法は、絵というものをよく知っていて、描ける能力のある人です。
腰のある紙(板ではないと思いますが)に、鉛筆でスケッチ、仕上がりを想定し、下塗りをくり返し、重厚な画面を作ります。そして仕上げ、鉛筆や細いクレヨン等で、線描き、不透明水彩で塗っていきます。下塗りを活かし重厚な画面ながら、色鮮やかに、濁りなく、描いています。とくに、この人の特徴である、色彩の良さ・・・この絵は、アンダルシア地方だけに、空からあふれるばかりの光が素敵です。太い線、力強い線、細い線、消え入るような線、線の美しさにもご注目。

≪翻訳の一部≫   翻訳:和泉 りき

おじいさんはオレンジの皮をていねいにむき、一房ずつお皿に並べます。
それを持って、ペトラの部屋に行き、ベッドのそばで腰を下ろすのです。
日に焼けたしわだらけの手で、孫娘・ペトラの柔らかい頬をなでながら、声をかけます。
「ペトラ、いい子だね。さあ、お日さまの贈りものを食べなさい。起きる時間だよ」
まだ目が覚めないまま、ペトラはおじいさんのほうを見ます。
おじいさんはオレンジを一房、ペトラの口もとに持っていってあげます。
甘い香りに鼻をくすぐられ、ペトラは口を少しあけます。
オレンジの果汁が口の中に広がると、笑顔になって、ようやく目が覚めるのです。
「おはよう、おじいちゃん」

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