これはもう、絵本でなく、すばらしい画集です。
| 2023年12月10日 05:00 | 吉村正臣 |
Frédéric Clément フレデリック・クレモン (フランス)
Lubie
ルビー 画家ヤン・ブリューゲルとちいさな妖精
フランス語 翻訳付
美術ファンを魅了する作品集です。何より、重厚な画面づくり、写実力が年季の入った作家の力を忍ばせます。色合いも素晴らしい。中世絵画のようです。しかし、肉筆で描かれた絵の中、また周囲に、使い込んだ絵筆や油壺など絵の道具、ドライフラワーなどが配され、組み合わされ、写真撮影され、1点の作品として仕上げられています。ですから、絵としては古典的ですが、他のものが配されることにより、今までに見たことのない絵画に出会うことになります。これは、逸品でしょう。
この絵本は、17世紀にフランドルで活躍した画家ヤン・ブリューゲルのお話。亡くなった父が残した顔料の壷を、ヤン少年はそっと開けました。すると、無数の妖精たちが飛び出しました。怖くなって、妖精たちを、再びその壷におしこめます。その後、画家になるヤンですが、誕生日ごとに、小さな妖精が現れ、意地悪なことをささやくのです。「売れもしない、つまらないものを描いていていいの? もっと強く、生きている花の姿を描くべきよ」と。
作者のフレデリック・クレマンは、1997年「ブラチスラバ世界絵本原画展」金のりんご賞受賞。1995年ボローニャ絵本原画展で、ボローニャ・ラガッツィ賞受賞。イラストレーションと造形物を組み合わせ、絵本を制作しています。日本でも何冊かの翻訳本が出版されています。
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