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東日本大震災時の“津波”をテーマにした、フランスの絵本

| 2013年09月13日 11:12 | 吉村正臣 |

絵本:une nuit où je me sentait seule  『津波:ひとりじゃないから』
絵・文:Xavier Armange グザヴィエ・アルマンジュ (フランス)

une nuit 表紙

Salon du livre et de la presse jeunesse Seine-Saint-Denis(パリの絵本市)が、7月末「この夏のおすすめ絵本」として、2012年~2013年に出版された絵本から、19冊をセレクション。
選考には、絵本市実行委員会メンバー、図書館司書、パリおよび郊外の書店、教育関係者ら16名が参加しました。<une nuit où je me sentait seule>は、その中の1冊です。

 

une nuit 1

夜が訪れる

ouest france(ウエスト・フランス フランス西部の日刊紙)の批評 42

絵本は、2年前の震災とその後の日本を描く。絵本の冒頭、他の丸印に混ざって、緑色の丸印が描かれている。それは見知らぬ人たちに囲まれ、都会でひとり暮らす女性の姿である。そしてまもなく、巨大な津波が街を襲う。群衆の中で感じる深い孤独と、震災後の地で生まれた絆を描いた絵本。

<作者・グザヴィエ・アルマンジュのインタビュー>

「(東日本大震災が起こる以前に)日本に行ったことがあります。日本の文化、日本人の繊細な感覚にふれた。世界中の人と同じく、あの津波には衝撃でした。絵本で表現するには、むずかしいテーマです。」

グザヴィエ・アルマンジュは、震災後の日本に、希望のメッセージを託した。<大災害からどのようにして立ち直るのか?>の問いかけに、子ども、大人の両方に向けて書かれた絵本は、やさしく詩的な文章と、心に残るグラフィック表現で、運命と、それを乗り越える人と人とのつながりの大切さを語りかける。

○スイスの絵本専門サイト RICOCHETの批評

ひとりの女性が、自分の住むマンションの上から、夜の景色をながめていた。はるか遠くに、別の人が星を見ていることに気づいた。犬の遠吠えが、ひとときをかき消してしまう。風が出てきて、地面が強く揺れだし、街のあらゆるものが崩れ落ちる。海は激しく波立ち、巨大な津波が襲ってくる。波に流されず、偶然に生き残ったふたり。自然は荒れ狂う。悲しみとその後生きることのたいへんさを残して。重く、つらいテーマを描くために、作者のグザヴィエ・アルマンジュは、幾何学的な形式のグラフィックで表現した。中心となる人物は、ほかと異なる色の丸印で表されている。
津波のシーンでは、イラストや色のタッチが変化し、波の調和した曲線を乱すように、線の粗さを残す。青い夜の色が消え、薄紫色に変化させ、別の時間が訪れたことを示している。本の装丁には、良質の紙を使用した、特別な一冊。

※タイトル、及び記事の翻訳は、<泉りき>がしました。

販売は、イラスト・ユーロ絵本ショップで、9月14日から発売です。