いつも迷いや不安を持つあなたに、私が私であることを見つける絵本
| 2017年02月24日 00:07 | 吉村正臣 |
Kitty Crowther キティ・クローザー (ベルギー)
DANS MOI
私の中でうごめくもの
フランス語 翻訳付
出版社:Pastel
キティ・クローザーは、1970年ベルギー・ブリュッセル生まれ。サン・リュック高等美術学院で、グラフィックデザインを学びます。1994年絵本デビュー。ユーモアあふれるタッチで、たちまち人気者になり、作品は約20の言語で出版されています。フランスとベルギーの主要な絵本賞のほか、オランダ「金の画筆賞」、スウェーデン「アストリッド・リンドグレーン記念文学賞」、日本の児童文学賞も受賞。作品制作とともに、若いアーティスト育成のためのワークショップを、世界各地で開催しています。この絵本は2008年韓国の絵本賞 CJ Picture book awardを受賞しました。
「わたし」は、わたしの心やからだを自由にできる王様でしょうか?どうやらそうではないみたいです。「わたし」に似た姿の鬼が、わたしの中にいて、主導権を争っています。それはことばではなく、ゲームで戦っているようです。「わたし」とは誰か? 見えない不安から解放され、「わたし」がわたしを決めるのだと、自分を肯定できるまでを描いています。テキストは、詩的な要素と哲学問答が混じり合います。フランスでは、8歳以上向けとなっています。
一種のマンガ(バンド・デシネ:BD)のようですね。物語に対して、おもしろ楽しくバックの白地を生かしながら、線描きで、さらに塗りつぶして描いています。人物のデフォルメが大胆で、特徴が上手に捉えられています。誰にでも描けそうな親しみやすさがあります。が、木々や草花が特徴的に描かれています。マンガに親しむ日本人にはわかりやすい絵でしょう。白地に黒とオレンジ色で描かれるのが基本となって、子の色合いが美しい。とても素朴であったかな絵です。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
私は、この体を思い通りにできない。王のように支配できなかった。
体内は真っ暗で、敵もいて、困っていた。
王になって、できそうもないことばかり命令してみたかった。
体内で鳥を飼い、花火をしたかった。
こんな暗い気持ち、もうたくさんだった。
とにかく一刻も早く過ぎてほしかった。
自分を自由にできないなんて。
だけど、おちおちしていられない。
私の中に、私を追い出そうとする、悪いヤツがいる。
鬼だ。私より背が高く、太っていて、唇は青かった。
でも、私に似ていた。
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