美しい絵が、さらに悲しみをさそう。優秀な作家です
| 2009年10月30日 13:43 | 吉村正臣 |
Olivier Latyk (フランス)
オリビエ・ラティック
「LE PETIT GARÇON ÉTOILE」
小さな星の少年
この絵本は、大変悲しく重い作品です。フランスでは、幼少時から、こんなことを教えるのかと、感心します。内容は、ナチドイツから逃げるユダヤ人の少年の短編の物語です。美しい色彩が、よけい悲しい少年の心境を表現しています。心の中が明るいときは、明るい色彩に満ちていますが、ナチスの迫害を語るシーンは、場面が反転して暗く重々しく表現され、空まで真っ赤になります。最後は明るい画面で救いとなりますが、しかし、全ページを通じ、少年の表情が寂しそうです。画法は、しかっり絵の具を塗り込んだ後、単純な画面に仕上げています。大変注意深く隅々まで配慮して塗っていることがよくわかります。色彩の美しいすばらしい絵本です。
作者は、1976年、フランス生まれです。
「Là-bas tout au fond du dessin」
そこに 〜デッサンの向こうにあるすべて〜
たいへん上手ですね。絵のテクニックもうまいし、上手に見せるコツも知っています。その上、心のありようもわかる人です。
この絵本の場合、絵の具で描いた部分、鉛筆で、色鉛筆で、コラージュで…と、多彩な技法が効果的に使われていますが、なにより、視野の広い風景を筆で描いている絵は、心をとらえます。見事と言えるでしょう。アイデアもいいですね。子供のデッサン画と、その向こうに広がる心の風景を、誰もが理解できるように構成しています。子供ばかりでなく、絵の好きな大人にもいい絵本だと思います。