ポップアートのような斬新な絵本、ホラーを思わせる展開
| 2016年02月25日 16:31 | 吉村正臣 |
Audrey Spiry オドレイ・スピリ (フランス)
TEMPÊTE
嵐がきた街
フランス語 翻訳付
出版社: Editions Sarbacane
注目の若手イラストレーター オドレイ・スピリの最新作です。パリのフランス国立高等工芸美術学校、アニメーション映画学校、アングレーム美術学校で学びました。
激しい色使いと力強いタッチが特長です。絵本、アニメーションフィルムを中心に活躍。コミック初作品のEn silenceは、2013年のアングレーム国際マンガフェスティバルで大評判となり、一躍有名になりました。
物語は、米国の田舎町を思わせます。主人公の12歳の誕生日、静かな街が突然、姿を変えます。それを「嵐」と呼ぶ主人公の少年。ホラーを思わせる展開と描写が登場します。息苦しいほど陰気な街と住民が、一変。混乱の中、なぜか住民は楽しそう。そして誰もがこうなることを期待していたようです。「嵐」のようなできごとは、ほんとうにあったのか、それとも主人公の願いだったのか…不思議な余韻を残す絵本です。
不透明水彩絵の具で、ぐいぐい描いた古くからの描き方でしょうが、とても新しく、最近の絵本やイラストレーションにはめずらしい表現でしょう。ポップアートのようです、また、マンガからの技法でしょうか、従来からの絵本イラストレーターではありませんね。このような作品を見せられると、絵本の可能性が無限にあると再認識します。自由な筆の動き、大胆な色の流し方など、既存の枠にとらわれない自由さをぜひ見てください。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
ぼくの家では、誕生日になると、ご近所の家族や知らない人たちもやってきて、
庭でパーティをすることになっていた。
他人はどうあれ、ぼくはもともと、パーティなんて好きではない。
人がやたら多くて、その上みんな、服装も髪もビシッと決めてさ。
凝った料理を囲み、おしゃべりに興じる人たちがいた。
演奏家らはさびしげなメロディを奏でると、椅子にすわったこどもたちは、退屈をもてあましていた。
めかしこんだ大人たち、晴れ着姿のこどもたち。その中で誰一人として、何かが起こりそうだとは、思いもしなかった。
だが、前兆はすでにあったのだ。
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