10月という月をひとりの男の子に見立て、秋は大活躍
| 2016年09月30日 03:00 | 吉村正臣 |
Cristina Sitja Rubio クリスティーナ・シティア・ルビオ (ベネズエラ)
Octobre
10月
フランス語 翻訳付
出版社: Editions Notari
クリスティーナ・シティア・ルビオは、ベネズエラ出身。現在、ベルリンとバルセロナを行き来しながら、制作活動を行っています。もともとは写真やデザインが専門でしたが、イラストの世界に転向。2011年、2012年ボローニャ絵本原画展に連続で入選、2014年リスボンのイラストレーション・ビエンナーレ(Ilustrarte)に入賞しています。イラスト・ユーロでは、彼女の前作で人気の高いLes autresも取り扱っています。
スイス・ジュネーブの出版社から、2015年10月に出版された絵本。タイトルは「10月」です。10月という月をひとりの男の子に見立て、秋は大活躍。冬のあいだは次に秋のために準備をし、春を待ち、夏には海へバカンスに出かけます。季節や月日が、私たちに人間にとって、とても近いものだと納得する一冊。季節ごとの色彩の変化がとてもすてきです。
素直に描かれた作品です。高度な画法にとらわれることなく、ただただ自分が美しいと思う色だけで描いた絵。さわやかで、楽しくなります。描きたいことが、ていねいに表現されています。水彩画用紙に、筆にたっぷりの水を吸わせ、きれいな色で走らせます。色鉛筆の跡も細やか。描こうとしたことにまじめに向き合っています。イラストの原点を見た気がします。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:和泉 りき
秋の朝、おひさまがゆっくりと、音もたてずにやってくると
10月は起き上がり、少量のミルク入り紅茶とタルティーヌの朝食をとる。
それからフランネルのセーターに袖を通し、ミストグレーのパンツ、厚手のウールのマフラーを巻き、コートを着る。
細かな霜の破片を、ポケットにつめこんで出かける。
道すがら、霜に息を吹きかける。
落ち葉を散らし、枝をきしませる。