フランスの女性作家による日本を舞台にした、不思議な物語
| 2017年03月21日 02:00 | 吉村正臣 |
Pierre Mornet ピエール・モルネ (フランス)
Le kimono blanc
白い着物
フランス語 翻訳付
出版社:Gautier – Langueteau
ピエール・モルネは、パリ生まれ。ESAG Penninghen(ペニンゲン美術学校)でグラフィックを学び、卒業後はイラストレーターに。物憂げな女性を描き、一躍注目を集めます。「プラダ」とのコラボレーション、「Kenzo」の香水パッケージなど、ファッション関係の仕事を多く行っています。2016年パリで初めての個展を開催しました。平面での作品制作が中心で、家族の肖像画を注文されることもあるとか。
絵本の出版はそれほど多くありませんが、今回ご紹介するLe kimono blancを含め、印象的な絵本が多く、絶版になった後も人気が続いています。
フランスの女性作家による日本を舞台にした物語に、ピエール・モルネが絵を描きました。タイトルのLe kimono blanc(白い着物)は、死期を悟ったおばあさんが、白い着物を身につけ、富士山をめざし、現世には二度と戻らないことを示しています。孫にあたる主人公のケイコの目を通して、おばあさんの姿が静かに語られます。
ピエール・モルネの特徴がよくでた、代表的な作品です。フランス人が憧れる日本なのでしょう。西洋画と日本画が折衷された絵ですね。西洋的というのは、立体的なボリュームの出し方、日本画的というのは、線で輪郭をとり平面的に塗り上げる部分。また、リアルと装飾性をうまく調和させています。絵の不気味さが物語の不思議さを倍加しています。彼は日本が大好き。奇妙ながら美しい国へのオマージュです。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
ケイコは、まちわびています。
春の訪れとともに、ケイコのおばあさんが、富士山のふもとの道を歩いて行くのを。歩くたびに、かわいい音を立てるはきもので、子どもみたいに飛び跳ねるおばあさんの姿を、ケイコは飽きずにながめます。
おばあさんが、森にある橋を渡るとき、蝶の羽根のように、着物の袖がひらひらと揺れるのです。
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