魚を乱獲、海が美しく反乱。文字がありません。想像しましょう

｜ 2017年03月02日 09:54 ｜ 吉村正臣 ｜

LAËTITIA DEVERNAY　レティシア・ドゥヴェルネ（フランス）

LA DANSE DE LA MER
海は踊る

文字のない絵本です
出版社：Joie De Lire

レティシア・ドゥヴェルネ（1982年生まれ）は、パリ出身の絵本作家・イラストレーターです。フランス中央部・オーベルニュ地方在住。ストラスブール装飾美術学校、パリ国立高等工芸美術学校で学びました。2006年国際イラストレーションコンクール（イタリア・ヴェニス）で入賞。文字のない絵本を得意とし、絵本＜Diapason＞は、2010年CJ Picture Book Festival（韓国）で賞を受賞し、2011年にはボローニャ・ラガッツィ賞を獲得。2012年 ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館が主催するV&A Illustration Awardを受賞しています。

海の中と海面を行ったり来たりするトロール漁船が、魚たちの目が、人魚が、海や潮の流れ、波にあわせて踊るようです。各ページはまるで、バレエやダンスの舞台のように描かれます。
そしてしっかりした主張を持つ絵が続き、文章がなくても意図はよくわかります。
冷凍装置を備えた大きな底引き網漁船が群団をなし、魚を一網打尽に採ってしまいます。海は、怒り出します。が怒りをあらわに描かれていません。海がダンスをするように、波になったり人魚になったり。魚も怒り出します。ついに平穏な海を取りもどします。

この主旨は、カバーの裏に、短いメッセージが添えられています。
＜海洋の豊かさや美しさをたたえる一方、海の生きものを乱獲し、汚染する人間の姿を表現しています。＞

この作家は、繊細で美しい線で描くのが、とても上手な人です。この作品も、ウエーブする細い線、平行に引いた細線、太線、そしてそのリズムをさえぎる濃い線と、線で描いた絵本です。その上に、黒を基本色に、赤、グリーンがシンプルに使われます。スクリーントーン、墨、わずかな色を使い、紙をカットして制作（Macが使われたのかな？）、その紙の厚さが変化をつけています。ひかえられた色合いといい、流れるような線といい、日本画の美しさに似たころがあります。

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