人の心の動きを、繊細で詩的なタッチで描いています
| 2017年04月21日 04:00 | 吉村正臣 |
Monica Barengo モニカ・バレンゴ (イタリア)
nuage
雲
フランス語 翻訳付
出版社: PassePartout Editions
イラストレーターを描いたモニカ・バレンゴは、イタリア・トリノ出身。1990年生まれの若手です。イラストレーターのマウリツィオ・A・C・クゥアレーロに師事し、ヨーロッパ・デザイン学院トリノ校を卒業。2012年と2013年、ボローニャ絵本原画展に入選しました。2013年イタリアイラストレーター協会の新人賞を受賞。この絵本は、イラスト・ユーロでご紹介したデビュー作<Pollen>に続く、第二作目です。
目覚めたとき、なんとなく気分がさえない朝がある。きっと、雲がかかっているから。その雲が通り過ぎるまで、じっと待つ。次の朝が来たら、雲は消え、気分もよくなる…空に雲がかかるように、気分が晴れないとき、太陽の光が届かないとき、心に雲がかかっているのでしょう。そんな人間の心の動きを、繊細で詩的なタッチで描いています。
たいへん憂いを感じさせる絵です。それは、描かれる女性の体つきと、仕草が美しいからでしょう。また、全体がセピア調。厚手のボール紙のような紙面にテクスチャがあり、少しパルプ材が現れる部分もあります。温かさもあります。絵を成功させているのは、女性の肩、首筋、腕などからわかる、しっかりしたデッサン力、そのうえでのデフォルメです。一見銅版画かなとも見えたが、手で描き拭き取ったりして仕上げたのでしょうね。良い作品です。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき
どうも気分が乗らない朝があるの。
ちょうど今日みたいに。
それがなぜだか、わからないけれど。
目覚めると、目の前に浮かぶ雲が
太陽の光をさえぎってしまう。
気づかないふりをして
ただ通り過ぎるのを待つだけ。
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