違いをこえて友情を育む物語。絵本らしい絵本
| 2017年10月14日 17:52 | 吉村正臣 |
Tiziana Romanin ティツィアーナ・ロマナン (イタリア)
L’histoire extraordinaire d’Adam R.
ぼくとアダムの37年
フランス語 翻訳付
出版社: Éditions SARBACANE
イタリアのヴェネチア近郊で生まれ、ミラノとパリを行き来しながら生活しています。ヴェネチアの美術アカデミーで舞台装飾を学び、舞台衣装の製作を経て、イラストレーションの世界に入ります。ポルトガルのイラストレーションビエンナーレIlustrArteに2003年と2004年に入選。さらに2015年と2016年は、イタリアの国際イラストレーション展Sarmedeに作品を出品。すでに数冊の絵本を出版。イタリア、フランスを中心に各地の学校でイラストレーションを学ぶ学生のマスターコースを担当しています。
実話に基づいた物語です。身長が小さいままで成長し、ある日突然どんどん大きくなりはじめ、止まらなくなったアダム。語り手のぼくとアダムは10歳違い。ちっとも大きくならないアダムを「ぼく」は最初、からかいの対象にしていました。でもたくさんの本を読み、夢を語り、ユーモアを忘れないアダムと親しくなっていきます。ぼくはやがて靴職人になり、どんどん大きくなるアダムのために靴を作ります。年齢、身体、さまざまな違いをこえて友情を育み、アダムの生きた証を心に刻む「ぼく」の成長が描かれます。
登場人物は、子供ばかりではなく、とてもふっくらして、心があたたかくなる絵です。鉛筆で描いた線をいかし、そこにマーカー?アクリル絵の具?で、淡くボリュームをつけるように色づけしています。影の部分は深く、光の部分は紙の地を残しています。靴屋さんの工房や、建物、洋服など、古き良き時代を感じさせ、あたたかく優しく、どこか懐かしさを感じさせます。とくに建物は良くかけています。絵本らしい絵本に巡り会いました。
≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉りき
4才のぼく
ぼくの背はアダムと同じぐらい。アダム一家はお隣に引っ越してきたばかり。いずれアダムやそのきょうだいたちと、いっしょに遊ぶことになるのだろう。と思っていたら、アダムは外で遊ぶのがいやみたいで、自分が読んだ本の話を、ぼくに説明するほうが好きだった。同じ背丈のアダムだけど、ぼくと同じ「こども」ではなかったのだ。ぼくはあとになって、そのことがわかるようになった。
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