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心を動かされるボーイミーツガールの物語です

| 2019年11月27日 10:20 | 吉村正臣 |

Susanne Janssen  スザンヌ・ジャンセン(フランス在住)

L’incroyable histoire
不思議な出会いの物語
( L’incroyable histoire de l’enfant terrible et de la petite fille oiseau 「少年と少女-不思議な出会いの物語」)

L'incroyable表紙-650

フランス語 翻訳付
出版社:OQO Editions

デュッセルドルフの高等デザイン美術学校でデザインとグラフィックを、さらにイラストレーターのヴォルフ・エァルブルッフのもとで、イラストを学びます。1994年ブラチスラバ国際絵本原画展に入選。1997年に同展の最高賞「金のリンゴ賞」を受賞。2008年ドイツ児童文学賞(アルバム部門)を受賞。重厚な画風で、絵本制作のほか、絵画や舞台装飾分野でも活躍しています。

物語りは、親から愛されず、周囲から疎まれた少年にとって唯一の居場所は木の上。ある日、そこで鳥の卵を見つけ、孵化させます。生まれてきたのは、鳥の姿をした少女。そのとき少年ははじめて「好き」になる気持ちが生まれます。少女を振り向かせようと、少年は努力しますが、いっこうに思いは伝わりません。愛されたことのない少年には、愛することがわからなかったから。どうすれば、少女に愛が伝わるのか。少年のとった驚きの行動。愛する相手への不器用な献身は、どこか谷崎潤一郎の「春琴抄」を思わせます。

なんと力強く、迫力のある絵なのでしょうか。怖い、と言う人も、エネルギーを感じる人もいるでしょう。何度かこの作家の作品をご紹介していますが、常に大胆で破壊寸前のパワーを見せています。具象画ですが、人や事物が、かわいさや優しさを拒否して、大胆にデフォルメされています。しっかり厚塗りをし、独特の仕上げをした紙を切りコラージュ。地の紙にも下地を生かした塗り込みで、重厚な画面。深く影のある赤が重要なスペースを占めています。そして描き込まれた黒のコントラストが美しい。これこそ個性的な画法です。

≪翻訳の一部≫    翻訳:泉 りき

その建物の前には、庭があった。庭には木が一本。木はとても大きかった。
言うことを聞かない少年は、この木が好きだった。
学校から帰ると、宿題をせず、この木によじ登った。
母親は、窓から大声で叱りつける。
「いい加減にしなさい!どうしようもない子だよ、まったく」
そんなやりとりが、毎日、何か月も、何年も繰り返された。
言うことを聞かない少年と言われ続けたので、その子はしまいに、自分の名前を忘れてしまった。

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