ヨーロッパの一流イラストレータ イタリア、フランス、ベルギー、ドイツで活躍中のアーティストを紹介
   
SSL グローバルサインのサイトシール
 

毎回、ユーモアいっぱいのデルフィーヌ・ジャコの絵本。

| 2020年05月08日 16:35 | 吉村正臣 |

Delphine Jacquot デルフィーヌ・ジャコ(フランス)

Conversation avec le loup
イダとオオカミの知恵くらべ

フランス語 翻訳付
出版社:Saltimbanque

 

ユーモアあふれる作風が魅力のイラストレーター、デルフィーヌ・ジャコ(1982年生まれ)。フランス西部・レンヌの美術学校で、広告グラフィックデザイン、レイアウトを学びました。その後3年間、ブリュッセルの美術学校へ留学します。帰国後まもなく、大手出版社からデビュー作を出版します。コラージュ、鉛筆、マーカー、アクリル絵の具などを組み合わせて制作。すでに20冊近い絵本を出版し、2015年にはイラストレーション大賞、リール・アンサンブル賞を受賞しています。

主人公のイダは、パパが運転する自転車が引っ張るミニトレーラーに乗り、出かけることに。暗い夜道を走っていると、突然オオカミが現れ、イダのトレーラーに乗り込みます。オオカミに食べられてしまう。だけどパパは何も気づかない。さんざんオオカミに脅かされますが、何とか乗り切り、トレーラーを降りることに。農家で、パパと一緒に生まれたばかりの仔馬を見せてもらい、名付け親を任されます。仔馬のことで取り込んでいる納屋に、飼い犬が乱入。農家のご主人は犬を叱りつけ「出て行け」と一蹴します。帰り道、トレーラーに戻ったイダのもとにオオカミが再び現れます。でも今度はイダは動じません。思わず出た一言で、オオカミもタジタジに。悪者として描かれるオオカミとイダのやりとりが、何ともユーモラスです。

シンプルな絵で、構成も単純ですが、引き寄せられる魅力あります。描く対象物が、版画のような大胆な絵でありながら、絵自体は細かく描かれています。基盤に使われている紺色が美しく、それに黄色がそえられ、おしゃれです。白地を生かして大きく描く絵、一方全体をしっかり塗りこむ絵もあり、よく考えられた表現となっています。色鉛筆のようなもの、マーカー、それに絵の具が使われているのかな…?ミックスされ描かれています。キレイな作品です。

≪翻訳の一部≫ 翻訳:泉 りき

「イダ!」呼んでいるのはパパ。
「いいものをあげよう」部屋に入ってきたパパが言う。
イダの目がきらきらと輝く。
「さっそく自転車で出かけないと」
「でも、日が暮れてるよ!」イダは叫ぶ。
「大丈夫。まだ外は明るいから」

イダは、パパの自転車の後部に取り付けたトレーラーに乗る。
この物置みたいな狭い空間が、イダは大好き。
「いいものって何?」イダはたずねる。
「あははっ!」自転車をこぎだし、パパは意味ありげに笑う。

この絵本のお取り寄せは:https://illust-euro.ocnk.net/product/481