力強い筆勢の線描に、ぼかしや飛沫で描く東洋画
| 2024年02月05日 05:00 | 吉村正臣 |
Chen Jiang Hongシャン・ジャン・オン(中国・パリ在住)
チェン・ジャン・ホンは1963年、中国・天津生まれ。北京の中央美術学院を卒業後、87年パリに移住。エコール・デ・ボザールにて油彩画を学ぶ。
中国の伝統的水墨画の技法でダイナミックに描く絵が高く評価され、画家として成功します。96年に絵本作家としてデビュー。ヨーロッパ各国やアメリカでも翻訳出版され、好評を博しています。
<この世でいちばんすばらしい馬>は、05年にドイツ児童図書賞を受賞。<Petit Aigle(小さな拳の達人)>は2007年ベルギーの児童文学賞で、子供たちが審査員を務める「ベルナール・ヴェルセル賞」(8歳から10歳向け)を受賞しました。
制作シーン:https://youtu.be/OKZ85Kg-Ypk?si=-Td1_0NGlROfe_Rt
Lian(リアン)
ローさんは孤独な漁師で小さな船にすんでいます。ある日、川を渡ってくれたお礼にと、おばあさんが蓮の種をくれました。この種を植えると、一晩で蓮の花が咲き乱れ、その花びらから、小さな女の子が顔を出しました。リアンです。少女には不思議な力がありました。リアンは魔法でローさんに立派な服、美しい船、豊かな魚を与えました。この魔法のせいで、王さまとお姫様の妬みによりリアンに危険が迫ってきます…。
花の精と親切な漁師の優しい絆を描く美しい大型絵本です。この物語には、中国文化に源を見出します。きっと、日本人の心も打つでしょう。(フランス人の好きそうなテーマです。)
風景、人物、家、衣装、ここにあるすべてのものは、作者が母国で身につけ、パリに住まいで、中国文化を客観視できたことによる作品ではないでしょうか。例えば、表紙の絵は、中国の画法そのものですが、とてもシンプルにまとめています。中のページの絵にも、筆による墨のデッサンに、シンプルな色彩を配したり、マンガのコマ割を使ったり、今日的な工夫も見られます。伝統画法を今に生かした作品となっています。
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Petit Aigle(小さな拳の達人)
15世紀の中国のお話です。ある冬の夜、ヤン師が凍死しかかった少年を外套で包み帰ってきました。この子は孤児だったのです。ある夜、少年はヤン師が鷲形拳の訓練していることを知ります。それ以来、毎晩、隠れてヤン師を観察し、見た技はすべての動きを繰り返します。ヤン師は、少年に才能があると見抜き、弟子にすることを決意します。恐ろしく長く困難な修行が始まります。少年は並外れた能力を身につけることになるのですが…。
表紙の赤い色の使い方が中国のものでない感じがして購入し、調べたら中国で勉強しパリで画家になったと知りました。
躍動する墨のデッサンが素晴らしいです。マンガのようなコマ割も使われ、描く視野の移動…一種のカメラワーク…の切り替えがうまいので、ストーリー展開がわかりやすい。
中国好きで、マンガ愛好のフランス人に人気のある作家でしょう。
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