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虐げられるロマの女性のかなしい物語。大変よい絵本です。

| 2024年01月01日 00:00 | 吉村正臣 |

Delphine Jacquot デルフィーヌ ジャコ (フランス)

Le fil de soie
絹糸

フランス語・意訳付
出版社:EDITIONS THIERRY MAGNIER

 

1982年生まれ。フランス西部・レンヌの美術学校で、広告グラフィックデザイン、レイアウトを学びました。その後3年間、ブリュッセルの美術学校へ留学します。帰国後まもなく、大手出版社からデビュー作を出版します。コラージュ、鉛筆、マーカー、アクリル絵の具などを組み合わせて制作。
2014年、ムーランのイラストレーション博物館が授与するイラスト部門のグランプリを。その後、数々の賞を得ています。すでに20冊近い絵本を出版。

文章はセシル・ルミギエール(Cécile Roumiguière) 1961年生まれ。フランスの南部ロデーズ生まれ、パリで活躍している。児童小説や絵本の作家であり、一般向けのショーの脚本家、朗読やその他の映画のプロデューサーでもある。

このお話は、フランスに暮らすロマの人の物語です。
「ロマ」は従来、「ジプシー」などと呼ばれてきた人たちで、周囲の無理解やエキゾチックな風貌から、「流浪の民」といったロマンティックなイメージで語られたり、いわれなき憎悪によって差別的に扱われ、迫害されてきました。
この悲しい歴史を体験してきた祖母と、なにも知らない孫娘の日々の暮らしを描いています。そして、娘は・・・

絵はデルフィーヌ・ジャコらしい、独特の仕上がりで、同時にロマの人々のニュアンスをみごとに表現しています。この物語の重要な『おばあさんの縫い物』の刺繍が、文字ページに描かれ、左ページは、しっかり塗られた裁縫や想像の世界がエキゾチックにドローイングされています。大変よい物語で、さらに独特の深い絵に、感動させられます。
子供ばかりか、大人の方にも手に取ってほしい、素晴らし作品、おすすめです!

「意訳」の一部

縫っては縫い、縫っては縫い・・・
マリー・ルーはマミロナの指を目で追う。
指は、銀色の布の上を、ためらうことなく、素早く走る。
〜♪友達はみんなオロを踊り、楽しんでいる♪〜 (ロマの伝統的な民謡)
おばあちゃんは知らない言葉で歌う。
マリー・ルーは放課後、おばあちゃんのマミロナの仕事を見るのが大好きだ。
布地がキッチンテーブルを色とりどりの花束のように埋め尽くす。
ミシンの音とおばあちゃんの歌にうっとりしながら、マリー・ルーは休む。
そしてハサミをパチンと鳴らす。
彼女は宿題やレッスンのことで頭がいっぱいになる。
ふたたび針を手に取る。
書き取りの失敗を、からかわれたことも忘れる。

この絵本のお求めは: https://illust-euro.ocnk.net/product/552